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センター長ご挨拶

神経難病研究センター・センター長

石垣 診祐

2024年(令和6年)4月より、神経難病研究センターのセンター長を拝命いたしました石垣診祐です。初代センター長である木村宏先生(現名誉教授)から、遠山育夫先生(現副学長・理事)、西村正樹先生(現公立八鹿病院院長、前基礎研究ユニット教授)、そして漆谷真先生(現医学科長)という、錚々たる先達の後を継ぐ重責を感じております。新年度を迎えるにあたり、一言ご挨拶申し上げます。

神経難病研究センターは、1989年に滋賀医科大学に設立された分子神経生物学研究センターが起源です。その後、2度の大規模な改組を経て、1999年4月に分子神経科学研究センターに、そして2016年4月に現在の名称へと変更されました。センターは基礎研究ユニット(西村正樹前教授)、臨床研究ユニット(漆谷教授)、そして橋渡し研究ユニット(石垣)を含む構成で運営されています。これまで、認知症、神経変性疾患の病態研究に加えて、フッ素化合物を使用したアミロイドMRI、ALSに対する抗体治療法の開発、タウを標的とした核酸医薬の開発、バイオマーカーとしての脳機能指標の確立、そしてアルツハイマー病のカニクイザルモデルの作出など、オリジナリティとインパクトに富んだ研究を推進し、数多くの成果を世界に発信してきました。今後も、各ユニットが専門性を深めながら連携し、国内外の学外機関とも積極的に交流を図りながら研究活動を進めてまいります。

私が医師になりたての四半世紀前、がん、AIDS、神経変性疾患は克服すべき3大疾患とされていました。がんとAIDSに関しては、分子標的薬やゲノム医薬、診断法などの顕著な進歩により、治療可能な病気へと変わりました。次に、神経変性疾患の克服が求められており、実際にアルツハイマー病向けの抗体医薬の導入が進んでいます。しかし、神経変性疾患の多くはまだ治療が難しい状況にあります。アルツハイマー病、パーキンソン病、ALSなどの疾患は、蛋白質と遺伝子の2つの要素をキーワードにして、その分子病態が飛躍的に解明されてきました。今後は、MRIによる画像情報やウェアラブルデバイスを用いたデジタルバイオマーカー、レジストリーで得られるゲノム情報など、多様なモダリティを疾患モデル研究や病理学的研究に取り入れ、病態解明、治療法・バイオマーカーの開発をさらに進める必要があります。滋賀医科大学神経難病研究センターは、神経難病の解明と治療法開発という、医科大学の神経科学センターとしての使命を忘れることなく、精進して参ります。皆様の変わらぬ支援と激励を心よりお願い申し上げます。

令和6年4月
石垣 診祐